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ISHIYAの農業研修レポート#1

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2020.11.02

ISHIYAの農業研修レポート#1

「北海道農業の価値を高める」

 

2018年5月、北海道産バニラの生産という壮大なプロジェクトが始まった。

 

石屋製菓が共同出資で設立した「北海道150年ファーム」では世界的に高騰してるバニラの栽培に着手。

現在も事業化に向けて試験栽培を継続している。

 

同社の目的はそれだけではない。道産原材料の目利き集団、付加価値プロディースをすることで、北海道の農業価値を高めるという理想を掲げている。

 

「北海道150年ファーム」バニラ試験栽培農園(札幌市東区丘珠)

 

 

未曾有の事態に出した決断、ピンチはチャンス。

 

2020年、世界が未曾有の危機に見舞われた。新型コロナウイルス感染症。

 

インバウンドが大きな強みであった観光産業については緊急事態宣言、外出自粛が影響し大きな打撃を受けた。

石屋製菓も例外ではなく、白い恋人パークの休業、在庫過多による製造工場の停止など多くの従業員が自宅待機を余儀なくされた。

 

また、農業分野では外国人実習生が入国できないなどの理由で人手不足が深刻な問題となっていた。

 

「これを機会に一次産業の現場を学べる研修が実施できないものか」

 

そんなトップの発案から農業研修のプロジェクトが動き始めた。ピンチはチャンスである。

 

石屋製菓はお菓子の会社だ。

「白い恋人」に使う小麦は道産100%。「白い恋人パーク」や直営店「ISHIYA Café」などで提供するメニューにも多くの道産野菜や果物が使われている。

原材料が生産される現場を知ることは、お菓子作りの原点を学ぶことでもある。

 

そして、以下の3つの目的を達成するため研修がスタートした。

  • 自分たちが製造・販売するお菓子の原材料がどのように生産されているかを学ぶ。
  • 各農家はさまざまな工夫を重ねて経営している。そのような優れた経営手法を学ぶ。
  • 研修先で知り合った方々との人材交流を通じて、コニュニケーション能力を磨く。

実はこの目的は研修生たちには知らせていなかった。

あらかじめ目的を教えるのではなく、どのような発見や学びがあるのかを自発的に気づいてもらうこと。

「実際に研修生たちがどんなアウトプットをしてくるのか楽しみ」というトップの”遊び心”もあった。

 

研修は2020年6月1日より10月31日までの5ヶ月間。

入社3年目までの30歳以下の社員約130名を対象に1ヶ月交代で実施することとした。

農業法人協会の協力を得て、道内10箇所の農業法人などが研修生を受け入れてくれることになった。

 

研修先のひとつ「輝楽里(きらり)」(江別市)

 

 

農業体験などない。前途多難な研修がスタート。

 

2020年6月1日 快晴。

いよいよ前途多難な研修が始まった。

 

研修生には事前の説明会を行い、日々の健康管理、研修レポートやInstagram用の写真の提出など多くの課題が与えられた。

 

業務上の問題などで、実際に参加したのは約100名。札幌市内をはじめ近郊の江別市、新篠津村、遠くは北見市や士別市にもいった。

通いができない地域については農家より宿舎が提供され自炊生活を行う。1農家あたり2名程度のペアとなるため共同生活となる。

農業法人の社長宅へホームステイをするグループもあった。

 

宿泊での研修となった「あったかふぁーむ」(士別市) お互いへの気遣いや協調性が必要とされる。

 

皆、農業経験などもちろんない。

研修担当者は「宿泊場所や作業が身体に合わない」、「虫が苦手」など研修生からの悩み相談を受けながらも親切に対応し、自家用車を所有していない研修生には、研修に参加しない社員が農家への送迎を担当するなどフォローを欠かすことなく研修に打ち込める環境を整えた。

 

研修生と共に経営幹部も農業体験を行った。研修生は社長宅に住み込みした。「Kalm角山」(江別市)

 

 

思わぬアウトプットを生んだ。

 

研修を開始して1か月。前述した”研修の目的”がにわかに感じられてきた。

 

日々の感動をレポートや写真とともにラインで送信してくる人。

作業の様子を動画に収め、学びの様子をショートムービーに編集して報告する人。

会社の企業理念や行動指針と照らし合わせて考える人。

 

それぞれが能動的に考え、何を学んできたのかを自由にアウトプットしていった。

 

また研修先では農作業に加え、取引先への訪問や地域交流会への参加、テレビ・新聞の取材や鈴木北海道知事の訪問、GLOBALG.A.Pの内部監査など、通常の業務では到底得られない体験をする研修生もいた。

 

機械の保守点検を担当する社員は、農機具やトラクターなど危険を伴う現場での安全対策について学び。

 

研修先の外国人実習生との異文化交流をする人まで現れた。

 

テレビ取材に対応する様子「大塚ファーム」(新篠津村)

 

 

GLOBALG.A.Pの内部監査に同席するなど農業経営における国際認証など経営手法についても学んだ。「森谷ファーム」(北見市留辺蘂)

 

研修先での人材交流でコミュニケーション能力を磨いた。「アイケイファーム余市」(余市町)

 

 

農業研修で得たもの。

 

研修を実施した先には、その学びが有効であったかの検証が必要である。

 

組織とは個人の集合体である。

組織の知識とは、個人の知識であり、文書化することのできない、経験から得た知識や成功及び失敗から学んだ教訓などがある。

組織はそれらを内部で共有し、誰もが利用可能な状態にすることが重要である。

 

そして、現在、そのような知識の共有が内側から湧いてきた。

 

商品開発を担当する社員は、研修を受けた酪農家へ原材料に使用する牛乳について相談を持ちかけ、試作品を試食してもらうなどアドバイスを受けながら開発を進めている。

 

白い恋人パークで販売を担当する社員は、研修先の経営者の言動を細かく観察。

時には厳しい環境で作業を行う現場でも、従業員への健康管理の配慮など、細かい気配りをしている姿を自分の将来像に重ねた。上位職を目指すためのキャリアプランの参考にしている。

 

製造部の社員は、研修先で学んだ廃棄削減のためのデータを応用。製造時に出る原材料ロスのデータをまとめ、廃棄物のコスト削減に取り組んでいる。

 

試作品を手に研修先のアドバイスを受ける社員。「Kalm角山」(江別市)

 

 

「命あるものから原料をいただく」

 

頭ではわかっているつもりでも、現場に行かなくてはわからないこともある。

 

この研修を通じて得られた答えはシンプルに、その真理を知ることであったのだろう。

 

 

Instagram用の写真を送信してもったラインにはコメントが添えられ、日々の研修で学んだ感動がつづられていた。

 

 

今後、数回のわたり、研修生のその後を追います。

 

<了>

 

文:石屋製菓㈱ 広報課 亀村建臣